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エベナビアゲッコー  -Ebenavia -

イースタンエベナビアゲッコー
 エベナビア属はマダガスカルとその周辺の島嶼に分布する小型ヤモリで、クチボソツメナシヤモリとも呼ばれる。現在6種に分類されているが、日本にて流通する際は同定されず一括りにエベナビアゲッコーとして販売されている。これはもともとEbenavia inunguis が一属一種として認識されていたためであると考えられる。実際にはEbenavia maintimainty が1998年に記載され2種の分類であったが、こちらは流通が皆無のため認知が非常に薄かったと推測できる。とはいえ流通しているものの中でも体色やサイズに差異が見られ、E. maintimaintyとはまた別で隠蔽種が存在するのではないかと気付く飼育者もいた(筆者はこの事実を教えていただいた)。そして遂に2018年にこの隠蔽種を分類した論文が出版された。この論文によってエベナビア属は2種から6種となった。以下にリンクを置く。
Ebenavia boettgeri Boulenger, 1885
Ebenavia inunguis Boettger, 1878
Ebenavia maintimainty Nussbaum & Raxworthy, 1998
Ebenavia robusta Hawlitschek, Scherz, Ruthensteiner, Crottini & Glaw, 2018
Ebenavia safari Hawlitschek, Scherz, Ruthensteiner, Crottini & Glaw, 2018
Ebenavia tuelinae Hawlitschek, Scherz, Ruthensteiner, Crottini & Glaw, 2018
 論文内に良い分布地図があるのだが、転載はできないので劣化版推定分布域図を軽く作ってみた。
イースタンエベナビアゲッコー
エベナビアゲッコー推定分布図
​ これを見ると、マダガスカル便にある程度詳しい方々は気付くと思われる。日本で流通するのはこのあたりだろうと。とはいえ、現在のマダガスカル両爬流通種を見ると、Ebenavia tuelinae 以外は可能性がないこともないと言えるという答えが出るかもしれない。筆者なりの考えをまとめたものは以下の通り。
主に流通する種:Ebenavia boettgeri ,Ebenavia robusta 
稀に流通する可能性のある種:Ebenavia safari
極稀に流通する可能性のある種:Ebenavia inunguis
​流通は考えられない種:Ebenavia maintimainty ,Ebenavia tuelinae
​ 根拠としては、まず論文に記載されている種判別情報を元に近年入荷したエベナビアゲッコーをショップの現物やSNS写真で同定してみたところEbenavia boettgeri Ebenavia robusta が確認できた。そしてマダ便で入るグランディスヒルヤモリやフリンジヘラオヤモリ、バロンマンテラ、サビトマトガエルなどはこの2種と分布が重なっている。
​ ヒロオヒルヤモリやエベノーヘラオヤモリ、グリーンマンテラなどはEbenavia safari と分布域が重なるがこれらとエベナビアの同時入荷は聞かない。デカリーヒメカメレオンあたりはEbenavia inunguis と分布域が重なるが、同じく同時入荷を聞かない。サラマンダーゲッコーやソメワケササクレヤモリ、ニビイロアリノハハヘビなどはEbenavia maintimaintyと分布域が重なるが、Emaintimainty は局所分布らしくこれらとともに捕獲されることはまず望めない。Ebenavia tuelinae に関しては、まずコモロ諸島からの爬虫類の入荷が絶望的。
​ 以上のことから筆者は現状流通しているのは2種と考察している。とはいえネロサラマンダーゲッコー Matoatoa spannringi が入荷した過去なんかもあるので、エベナビアゲッコー入荷時の他のラインナップを見つつ​可能性を追い求めてもいいのではと思う。

ということで、論文からわかりにくい部分を除いて判別方法をまとめると、

全体的に黒く、口吻が短い → Ebenavia maintimainty

茶色の方が強く、口吻が長め

全長が大きく、後肢の鱗に大きなものがまばらに混ざる → Ebenavia robusta

肢の鱗は均一

鼻孔と吻側鱗が接触していない → Ebenavia boettgeri

鼻孔と吻側鱗が接触する

背に特徴的な模様を呈する → Ebenavia tuelinae

背に特徴的な模様がない → Ebenavia inunguisEbenavia safari

大まかに以上だが、絶対な信用はしないでほしい。あくまで筆者がわかりやすい様に省き付け足しでできたものゆえ論文を読んでの判断を願いたい。こことここの長さの比がとか、ここの鱗の数がとか、骨の形がとか書いてある。上記は入荷時の種判別の一助としてもらえればで、正直boettgeri , inunguis , safari あたりはほぼ見た目変わらないのでrobusta が見分けられれば充分かと。相当コアな方でなきゃsafari が欲しいみたいなことも思わないだろうし。

 2019年入荷分を種判別してみると、Ebenavia boettgeri であった。記載前はEast Coast Cladeとして海外では認知されていたことから、

イースタンエベナビアゲッコー

 

ヒガシクチボソツメナシヤモリ

 

と呼称する。妥当感あると思うので、今後これを使って欲しい。

イースタンエベナビアゲッコー
イースタンエベナビアゲッコー抱卵

 飼育に関しても、しっかり餌を与えてかつ繁殖のスイッチとなる変動を与えれば抱卵する。しかし、餌の確保を面倒くさがってしまい失敗。

 2022年秋入荷分は棘状の鱗が尾の全面を覆い、後肢には大型鱗が混在。そして言うまでもなく大きいため、Ebenavia robusta であった。記載前はHighland Cladeとして海外では認知されていたとおり、標高1000m付近に分布している。夏場の高温には注意が必要と推測できる。本種は大きさに注目されやすく、種小名もそこからきているが、全体的なトゲトゲしさも大きな特徴だと思う。

   スパイニーエベナビアゲッコー

   トゲクチボソツメナシヤモリ

と呼称する。

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