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ヤシガニ
ムラサキオカヤドカリ

オカヤドカリ  Land Hermit Crab

 オカヤドカリ類は異尾下目オカヤドカリ科 Coenobitidae に属する甲殻類であり、ヤシガニ(1属1種)と17種のオカヤドカリ属に分類される。しかし、不十分な記載による有効種を含んでいるため、種多様性については不透明な部分も多い。本分類群は世界の熱帯亜熱帯における沿岸域に分布し、陸棲であることが大きな特徴。異尾下目において陸棲であるのはオカヤドカリ科のみである。日本では南西諸島や小笠原諸島などで主に見られる。

 日本においてオカヤドカリ属は国指定天然記念物とされ、野生個体の現状変更(触れることや採集などの作為的かつ物理的な変更行為)は禁止されている。さらに、植物防疫法における輸入規制対象とされているため、海外からオカヤドカリ属を生きたまま輸入することも禁止されている。

▼ 生息地 ▲

奄美大島

 南西諸島や小笠原諸島では生息密度が濃く、種を選ばなければビーチや海岸林にて簡単に見つけることができる。

 日本本土でも関東以南であれば僅かながら観察することが可能。環境条件が揃っていると、死滅回遊するものが死滅せずに残存するため、黒潮流域の各地で報告があがっている。

神奈川県の生息環境

▼ 日本に分布する種 ▲

 日本にはオカヤドカリ属7種とヤシガニが分布している。

オカヤドカリ
​オカヤドカリ Coenobita cavipes  
​ 内陸性が強く、山の中でも見つかる。
ナキオカヤドカリ
​ナキオカヤドカリ Coenobita rugosus 
​ 最もよく見られ、砂浜に多い。
サキシマオカヤドカリ Coenobita perlatus 
​サキシマオカヤドカリ Coenobita perlatus  
​ 発色の良い個体は苺のよう。
オオナキオカヤドカリ Coenobita brevimanus  
​オオナキオカヤドカリ Coenobita brevimanus  
​ 丸くて大きな左鉗脚を持つ。
オオトゲオカヤドカリ
​オオトゲオカヤドカリ Coenobita spinosus  
​ 謎が多く、日本ではまず見つからない。
ムラサキオカヤドカリ
​ムラサキオカヤドカリ Coenobita purpreus  
​ 日本代表種で、美しい青色に成長する。
コムラサキオカヤドカリ
コムラサキオカヤドカリ Coenobita violascens  
​ 成体は青紫だが、幼体は赤い。
ヤシガニ
​ヤシガニ Birgus latro  
​ 世界最大の陸生甲殻類。

▼ ​世界のオカヤドカリ種 ▲

Coenobita carnescens 
​フシグロオカヤドカリ(節黒)
​ 太平洋南西部:ポリネシア周辺
Coenobita longitarsis  
​アシナガオカヤドカリ(脚長)

​ 太平洋西部:フィリピン〜オセアニア
Coenobita pseudorugosus
アカツキオカヤドカリ
​ 太平洋西部:台湾〜フィリピン周辺(〜インド洋)
Coenobita scaevola
​サバクオカヤドカリ (仮)(砂漠)

​ インド洋西部:アラビア半島とその対岸
Coenobita lila
ウスムラサキオカヤドカリ(薄紫)
​ 太平洋西部:マレー半島南部
Coenobita olivieri
​ 不明 :タヒチ周辺?
Coenobita rubescens 
​ベニオカヤドカリ(仮)(紅)
​ 大西洋東部:ギニア湾周辺

▼ 海外探索 in Mexico ▲

 日本から太平洋を挟んだ向こう側であるアメリカ大陸の西岸に分布する、

ハクボオカヤドカリ Coenobita compressus

を探しにメキシコへ向かった。メキシコは治安面に懸念があるため、リゾート地のビーチを選択。昼間はたくさんの人々が海を楽しんでいた。

メキシコ シナロア
メキシコ シナロア

 見られる環境は日本と大差はないと推測していたため、砂浜と後背の岩石/植生が豊かなポイントを探す。夜に来る必要があるため、道中に危険が無さそうかも気にする必要がある。メキシコマフィア(カルテル)とカチあってしまったら命に関わる。

 昼間は一切姿が見えなかったため不安になったが、夜にはたくさんの個体が闊歩していた。薄暮のを移したかのようなグラデーションのある色味。美しい。

ハクボオカヤドカリ
マーライオン

▼ コロナ禍シンガポール紀行 ▲

 世界がまだコロナ禍中にある2022年

ウスムラサキオカヤドカリ Coenobita lila

​を探しにシンガポールへ向かった遠征記事。

▼ 出版情報 ▲

IMG_9073.jpg

オカヤドカリ
Land Hermit Crab in Pacific Rim
2024年9月22日 とんぶり市(先行販売)
2024年10月26日 いきもにあ(本格販売)
​2024年10月27日 通販開始

 オカヤドカリ科は太平洋・インド洋・大西洋に分布し、日本の位置する太平洋には全18種のうち15種が分布している。本書では、記載不明瞭1種を除いた14種について写真と解説を掲載。加えて、生活史や生態、環境、文化についても300点以上の豊富な写真とともに色濃く解説した、オカヤドカリ類の情報が究極に詰め込まれた1冊。

ISBN978-4-600-01494-0

​A5サイズ・フルカラー・82ページ

目次

 〈本書の科学的取り扱い〉

・オカヤドカリ科の2024年時点における包括的な知見集約

・太平洋に分布するオカヤドカリ科14種の横並び紹介

・新称の提唱

  ▶︎ Coenobita longitarsis アシナガオカヤドカリ(新称)

  ▶︎ Coenobita lila ウスムラサキオカヤドカリ(新称)

  ▶︎ Coenobita compressus ハクボオカヤドカリ(新称)

  ▶︎ Coenobita carnescens フシグロオカヤドカリ(新称)

  ▶︎ Coenobita variabilis レンガオカヤドカリ(新称)

・ヤシガニの額角形成の過程を撮影

・オカヤドカリ C. cavipes の種の北限更新(トカラ列島 宝島)

・大東諸島 南大東島におけるオカヤドカリ、ナキオカヤドカリ、ムラサキオカヤドカリ、ヤシガニの観察記録

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